作業分析は「できない理由」を並べる作業ではなく、「どこで止まり、何を変えれば通るか」を言語化する技術です。理由は、工程と条件が整理できるほど、評価→目標→介入が一直線につながるからです。この記事では、作業分析・活動分析・動作分析の違い、迷わない手順(準備→分解→解釈)、観察の視点(人・作業・環境)を押さえ、テンプレとADL例でそのまま実務に落とします。実習レポートや事例検討で「結局どう書けばいい?」が残らないよう、まとめ方の型も入れました。
作業分析ができると臨床が変わる「3つの理由」

作業分析が回り始めると、観察が方針に変わり、説明と介入の精度が上がります。理由は、情報が「現象の羅列」から「判断できる材料」へ整理されるからです。
作業分析は「できない」を分解して説明できる武器になる
作業分析は、“できない”を工程と条件に分けて説明できる武器です。理由は、止まる場所が特定できるほど、原因の当て推量を減らして次の一手を決められるからです。
たとえばトイレ動作なら、移動・方向転換・下衣操作・後始末などに分け、止まる工程を一点突破で追います。さらに「どの条件で止まるか」(急ぐと止まる/立位だと止まる/周囲が騒がしいと止まる)まで押さえると、環境調整や手順変更の候補がすぐ出ます。こうして整理すると、チーム共有も「だから何をするか」までセットで話せます。
作業分析が強い人ほど評価・介入・目標がブレにくい
作業分析が強い人ほど、評価・介入・目標がブレにくくなります。理由は、観察が「点」ではなく「線」になり、同じ作業の上で判断できるからです。
評価が点のままだと、目標は曖昧になり、介入は増えがちです。作業分析で「場面」「本人のやり方」「通る条件/崩れる条件」までそろえると、評価は“変えられる要素”に寄ります。結果として目標は条件付きで具体化し、介入も「練習」「環境調整」「道具・手順の再設計」を選びやすくなります。
作業分析が弱いと起きる“あるある”と、その回避策
作業分析が弱いと、同じところでつまずく“あるある”が起きます。理由は、手順や動作だけに偏り、文脈と条件が抜けやすいからです。
代表的なのは、①手順を書いて終わる、②動作だけ見て作業の意味や状況が抜ける、③理想手順を押し付けて本人の工夫を潰す、の3つです。回避はシンプルで「ゴールを先に決める」「本人のやり方から入る」「成功条件を先に置く」を守れば十分です。これだけで、作業分析は“提出物”から“支援の設計図”へ変わります。
「作業分析・活動分析・動作分析」の違いが1枚で整理できる

3つの違いは「問い」で整理できます。理由は、見る焦点が違うほど、集める情報と介入の打ち手が変わるからです。
作業分析は“その人の文脈ごと”捉える(目的・価値・役割まで)
作業分析は、“その人にとっての意味”まで含めて捉える方法です。理由は、目的・価値・役割が違えば、同じ動作でも支援の正解が変わるからです。
たとえば食事動作でも「誰と」「どこで」「どんな気持ちで」「どのやり方がその人らしいか」まで見ます。文脈が入ると、目標が生活の言葉になり、本人の納得感も保ちやすくなります。
活動分析は“標準的なやり方”を組み立てる(手順・必要要素)
活動分析は、“一般的に成立させるには何が必要か”を棚卸しする方法です。理由は、標準モデルがあるほど、抜けている工程や難所を見つけやすいからです。
更衣なら、衣類準備→姿勢安定→袖通し→前合わせ→整える、といった手順に加え、必要な認知(理解・注意・順序立て)や環境(椅子の高さ、スペース)を整理します。実習レポートで「分析の骨格」を作るときに特に強いです。
動作分析は“身体の動き”を切り出す(姿勢・関節・筋力・協調性)
動作分析は、工程を成立させる身体要素を具体化する方法です。理由は、つまずきを“努力不足”ではなく身体戦略として説明でき、練習の狙いも立てやすいからです。
移乗なら足部位置、体幹前傾、支持面への荷重、上肢支持の使い方などが対象になります。ただし動作だけに寄ると、道具や環境、本人のやり方の工夫が抜けやすいので、作業・環境の視点とセットで使うのが安全です。
混同を防ぐ最短ルール(どの場面でどれを使うか)
混同を防ぐには、問いを固定すると速いです。理由は、問いが決まれば集める情報が自動で揃うからです。
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「その人にとって何?」→作業分析
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「成立に何が要る?」→活動分析
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「身体はどう動く?」→動作分析
たとえば「ズボンが上がらない」なら、活動分析で工程を分け、動作分析で立位バランスや手の届き方を見て、最後に作業分析で“本人が守りたいペースや羞恥心”まで含める、という順が噛み合います。
迷わない作業分析は「準備→分解→解釈」の3ステップで回る

作業分析が難しく感じるのは、やることが多いからではありません。理由は、準備・分解・解釈が混ざると、観察が散って結論が出なくなるからです。
準備でズレを消す(ゴール・場面・本人のやり方の確認)
最初にやるのは、ゴールと場面をそろえることです。理由は、達成ラインが曖昧だと、観察の焦点が増えて迷子になるからです。
更衣なら「上衣が着られる」ではなく「病棟のトイレで上衣を着用し、乱れを整えて退出できる」まで決めます。次に本人の普段のやり方を確認し、変えたくないこだわりがあるかも押さえます。短時間でも、この3点(ゴール・場面・やり方)がそろえばブレません。
分解は“細かくしすぎない”がコツ(単位の決め方)
分解は、止まる場所を特定するために行います。理由は、細かすぎると観察が追いつかず、粗すぎると原因が見えないからです。
目安は「一度に判断できる単位」です。工程の切れ目は、立つ/座る、移動/操作、両手/片手など“判断が変わる瞬間”で切ると外しにくくなります。分解したら全工程を均等に見るより、詰まる工程に観察の比重を置くほうが結果につながります。
解釈は「阻害因子」と「促進因子」をセットで出す
解釈は、阻害因子と促進因子をセットで出します。理由は、阻害因子だけだと打ち手が増え、優先順位が付かないからです。
たとえば「立位で下衣操作が止まる」だけでなく「手すり支持があると両手時間が増える」も拾います。迷ったら、時間・姿勢・道具・声かけ・配置のどれを変えると改善するか、順番に試すと整理しやすいです。
最後に“検証できる仮説”に落とす(次の評価へつなげる)
最後は、検証できる仮説に落とします。理由は、「確かめられる形」になって初めて評価と介入がつながるからです。
例として「手すり支持を追加すれば、下衣操作の両手時間が増えるはず」のように、条件と指標が入る文にします。こうすると、作業分析はそのまま“次の一手”になります。
観察が浅いと言われない「人・作業・環境」の3視点

観察が浅くならないコツは、情報を3つの箱に入れることです。理由は、箱があるほど漏れと重複が減り、評価の言葉に変えやすくなるからです。
「人」で見るべきポイント(運動・感覚・認知・心理・習慣)
「人」は、身体機能だけに限定しません。理由は、注意・理解・段取りや不安・焦りが、工程の崩れ方を大きく変えるからです。
運動や感覚に加え、注意の向け方、順序立て、切り替え、疲労、習慣、こだわりも含めます。「疲労で崩れるのか」「焦りで手順が飛ぶのか」が分かるだけで、介入の方向はかなり絞れます。
「作業」で見るべきポイント(手順・難易度・道具・時間・安全)
「作業」は、その行為そのものの要求を見ます。理由は、工程の作りが難しいほど、練習より先に再設計が必要な場合があるからです。
工程数、同時処理、許容時間、失敗のリスク、道具の扱いやすさを確認します。両手操作と視線移動が重なる工程、やり直しが効かない工程は難所になりやすいので、そこに観察を寄せると効率的です。
「環境」で見るべきポイント(物理・人的・制度・文化・役割)
「環境」は物理だけではありません。理由は、状況がトリガーになって能力以上に崩れることがあるからです。
高さ・距離・照明・動線に加え、人の出入り、介助者の立ち位置や声かけ、ルール、時間制限、プライバシー、本人の役割意識も含めます。「人目があると急ぐ」「声かけが多いと混乱する」も環境要因として扱うと、調整の余地が見えます。
観察項目を“評価項目”に変換するコツ(言語化の型)
観察を評価に変える型は「現象→条件→仮説→指標」です。理由は、この順で書くと“次に何を確かめるか”まで自動で決まるからです。
例:ボタンで止まる→立位で止まる→体幹安定が弱く両手が分離しにくい→座位/立位で所要時間と失敗回数を比較。
この形にすると、記録も事例検討も一気に通りやすくなります。

そのまま埋めれば形になる「作業分析テンプレ5枠」

テンプレは、文章力ではなく再現性を作るために使います。理由は、枠があるほど観察が散らからず、評価→介入→目標へ落としやすいからです。
①作業の定義とゴール(何を、どこまでできればOKか)
最初は作業名より達成ラインです。理由は、ゴールが決まるほど評価指標が決まり、介入のズレも減るからです。
「いつ・どこで・どこまで」を含めて具体化します。
②場面設定(いつ・どこで・誰と・何を使って)
場面設定は“条件の見える化”です。理由は、条件が書けるほど環境調整の余地が見えるからです。
椅子高さ、手すり、スペース、時間帯、周囲の出入り、介助者、道具などを短く並べます。
③手順(本人の実際のやり方+理想/安全なやり方)
手順は2列で考えると迷いません。理由は、本人のやり方を基準にすると、介入が矯正になりにくいからです。
本人の実際の順番と工夫を書き、次に安全面や効率の観点での代替案を置きます。
④うまくいく条件/つまずく条件(促進因子・阻害因子)
条件は“セット”で書きます。理由は、阻害因子だけだと打ち手が増え、優先順位が付かないからです。
「止まる条件」と「通る条件」を並べるだけで、練習か調整か再設計かが見えやすくなります。
⑤仮説と次の一手(追加評価・介入候補・目標のタネ)
最後は「だから次に何をするか」です。理由は、次の一手が書けて初めて作業分析が臨床で回り始めるからです。
仮説は1〜2個に絞り、追加評価・介入の本線・目標の条件を短く置きます。
そのまま使えるテンプレ(コピペ枠)
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作業(何を):
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ゴール(どこまで):
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場面(いつ/どこ/誰と/道具):
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本人のやり方(手順):
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代替案(安全・効率の別案):
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うまくいく条件(促進因子):
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つまずく条件(阻害因子):
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仮説(何が影響?):
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次の一手(追加評価/介入候補/目標のタネ):
ADLは「更衣・トイレ・食事」の3例で一気に掴める

ADLはテンプレに当てると理解が一気に進みます。理由は、工程と条件が見えるほど、介入の候補が具体になるからです。
更衣の作業分析(観察項目/つまずき例/介入の方向性)
更衣は、止まる工程を特定するほど改善が速いです。理由は、難所が「姿勢」「手順」「道具」「環境」に分かれ、打ち手が絞れるからです。
袖通し/背中回し/前合わせ/ボタンのどこで止まるかを確認します。立位で止まるなら支持、急ぐと崩れるなら注意配分が疑えます。座位手順化や衣類の工夫で“通る条件”を先に作ると結果が出やすいです。
トイレ動作の作業分析(移動〜後始末までの切り分け方)
トイレは工程を分けて一点突破が有効です。理由は、工程が多く、つまずきが連鎖しやすいからです。
移動→方向転換→下衣→着座→後始末→立ち上がり→下衣→退出に分け、止まる工程を決めて追います。手すり・立ち位置・動線を整え、残る工程だけを練習で狙うと効率的です。
食事動作の作業分析(姿勢・道具・注意配分の見立て方)
食事は“後半の崩れ”まで見ると判断が早いです。理由は、疲労や注意低下が後半に出やすく、セッティングで改善することも多いからです。
姿勢が崩れてこぼれるのか、操作が乱れるのか、刺激で手が止まるのかを分けて観察します。道具変更とセッティングで負担を下げ、必要な要素だけ練習に乗せるとブレません。
作業分析を「評価→目標→介入」へ一直線にする3点セット

一直線にするコツは「条件」を中心に置くことです。理由は、条件が決まるほど目標が具体化し、介入の優先順位も決まるからです。
評価は“原因探し”ではなく“変えられる要素探し”にする
評価は「変えられる要素」を見つけるのが強いです。理由は、変えられる要素が見えれば、介入が増えずに済むからです。
「○○だから」で止めず、「□□なら進む」をセットにします。例として「立位だと下衣が止まるが、座位+支持なら進む」と言えると、環境調整と手順再設計が候補に上がります。
目標設定は「できる形に作り替える」書き方でズレが減る
目標は条件付きで書くとズレが減ります。理由は、評価で拾った促進因子をそのまま目標に載せられるからです。
「自立する」より「座位で袖通し〜前合わせまでを見守りで完了」のように、条件と範囲を入れます。

介入は3ルートで選ぶ(練習/環境調整/道具・手順の再設計)
介入は3ルートに仕分けます。理由は、ルートが決まるほど優先順位が明確になり、手段が散らばらないからです。
促進因子が環境にあるなら調整が先で、残る工程だけ練習で狙います。道具や手順の再設計が効くケースも多いので、練習一択にしないのがコツです。
効果判定を最初に決める(何が変われば成功か)
効果判定は最初に置きます。理由は、指標があるほど介入が“やった感”で終わらないからです。
所要時間、失敗回数、介助量、成功率などを工程単位で設定します。指標があると再評価が回り、次の一手も選びやすくなります。
事例検討・実習レポートで強くなる「まとめ方2つの型」

まとめ方は「読み手が迷わない順番」を作るために使います。理由は、材料が同じでも、順番で伝わり方が大きく変わるからです。
型①「作業に沿って書く」:手順→つまずき→要因→対応
型①は、工程の流れで書く方法です。理由は、読み手が場面を想像しやすく、因果関係が追いやすいからです。
工程→条件→仮説→対応を並べます。単一ADLを深掘りしたいときに特に強く、工程ごとに“通る条件”を一言入れると介入が伝わります。
型②「要因で束ねて書く」:人・作業・環境→優先順位→計画
型②は、人・作業・環境で束ねる方法です。理由は、複数ADLや経過報告でも結論が太くなるからです。
3つの箱に入れたあと、優先順位をつけて「環境→再設計→練習」の順に並べると方針がブレにくくなります。

一文で言える結論の作り方(“だから何をする”で締める)
結論は一文で言える形にします。理由は、その一文が評価・目標・介入を一本化するからです。
「○○の△△工程が□□条件で止まる。要因は××。だから①〜③を行い、▲▲で判定する。」
この形が作れれば、事例検討でも実習レポートでも詰まりにくくなります。
まとめ(最終調整 & まとめ作成)

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作業分析は、評価・介入・目標をつなぐ設計図になります。
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違いは「問い」で整理し、3分析を使い分けます。
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進め方は「準備→分解→解釈」で迷いにくいです。
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観察は「人・作業・環境」に分け、評価の言葉へ変換します。
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テンプレ5枠に当てはめると、ADLでも即つながります。
総括
まず担当ADLを1つ選び、テンプレ5枠を埋めてください。止まる工程と“通る条件”が言語化できたら、目標に条件を載せ、介入の本線(練習/環境調整/再設計)を決めるだけでOKです。1回で完璧を狙わず、仮説→試す→修正の小さなループで回すと、作業分析は確実に鋭くなります。



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