結論:目標は「やりたい生活 → できる条件 → 次の一歩」の順で作ると迷いません。
機能(筋力や可動域)は“手段”なので、目標文は「その機能で何ができるようになるか」まで書き切ります。
短期目標は“練習メニュー”ではなく、2〜4週で達成したい生活の一部にすると現場で回ります。
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作業療法の目標設定がブレやすい3つの落とし穴

目標がブレる原因は、知識不足というより「並べ方」と「言葉の置きどころ」にあります。理由は、忙しい現場ほど“書きやすさ”が優先され、本人の意味や積み上げの論理が後回しになりやすいからです。先に落とし穴を押さえるだけで、後の手順(本人希望→ICF→SMART→GAS)が回りやすくなります。
「とりあえずADL」になって本人の意味が抜ける
ADL項目だけで目標を作ると、本人の「なぜそれをしたいか」が抜けやすいです。理由は、目的(参加)が見えないため、介入の優先順位が決めにくくなるからです。たとえば「更衣自立」が同じでも、本音が「一人暮らしを続けたい」なのか「孫の結婚式に行きたい」なのかで、必要な活動や環境調整は変わります。まずはADLをゴールに置くのではなく、「参加に近づくための活動」として位置づけると筋が通ります。
長期と短期が積み上がらず、共有でさらに薄まる
長期と短期が噛み合わないと、短期を達成しても生活の変化が見えにくくなります。理由は、長期が抽象的すぎるか、短期が“測りやすい項目”に寄りすぎることで、同じレール上に積めなくなるからです。さらにチーム共有では説明しやすさが優先され、言葉が一般化して目標の芯が薄まりがちです。長期は「参加の一文」で固定し、短期はそこに積み上がる活動へ分解する、と最初に決めておくと崩れにくくなります。
本人希望を取りこぼさない2つの聞き方(COPM・ADOCの使いどころ)

本人希望は「聞いたつもり」でも、目標文にすると消えがちです。理由は、希望を“気持ち”のまま扱うと、行為・環境・評価に変換できないからです。ここで希望を生活場面に固定しておくと、後のICF整理とSMART文章化が一気にラクになります。
「やりたい」を“場面・頻度・困りごと”まで具体化する
「歩きたい」「料理したい」は、そのままだと目標にしにくい表現です。理由は、同じ言葉でも人によって思い浮かべる場面が違い、評価も介入もズレるからです。まず「いつ・どこで・誰と(または一人で)・どれくらい」を足して映像化します。例として料理なら「自宅台所で、10分程度の簡単な調理を、一人で行う」まで落とすと、必要な活動(立位保持、片手操作、段取り)が見えます。最後に「今いちばん止まっているのはどこか」を押さえると、優先順位が決まりやすいです。
COPMとADOCをどう使い分けると早いか
COPMは本人が大事にしている作業を深掘りし、重要度・満足度を手がかりに優先順位を決めるのに向きます(Canadian Occupational Performance Measure)。理由は、本人の“意味”を言語化しやすく、目標の芯がブレにくいからです。ADOC(ADOC2)はイラストや選択肢を使って希望を引き出せるため、言葉にしづらい方や候補を素早く広げたい場面で便利です(Aid for Decision-making in Occupation Choice)。実務では「ADOCで候補を見える化→上位をCOPMで深掘り→目標の一文へ変換」の順が速く、迷いが減ります。
ICFで迷わない「参加→活動→条件」を1本につなぐコツが3つある

ICFは分類を覚えるより、順番を固定するほうが実務で効きます。理由は、「参加→活動→条件→評価」の並びにすると、目標文が毎回同じ型に収まり、共有でも崩れにくいからです(この章では主に前半3つを扱います)。

参加(役割・生活)を先に置くとズレにくい
参加を先に決めると、目標が生活の意味に紐づきます。理由は、参加が決まると必要な活動が自然に見え、短期へ分解しやすくなるからです。「外出できる」より「週1回、近所のスーパーで買い物し、会計まで行う」のほうが、歩行・注意配分・金銭管理などの焦点が定まりやすいです。逆に条件(筋力や可動域など)から入ると、改善しても生活が変わらない“訓練止まり”になりやすいので注意します。
活動と条件(心身機能・環境)を混ぜない
活動と条件を混ぜると、文章が長くなり評価が曖昧になります。理由は、「何ができれば達成か」と「何を整えればできるか」が一文に混ざると、判定基準がブレるからです。活動は「やること」、条件は「できる前提」に分けます。例として、活動は「屋内でトイレまで移動し移乗する」、条件は「手すり使用・注意配分の工夫・見守り範囲」と切り分けます。条件には心身機能だけでなく、導線や家族の関わりなど環境要因も入るため、ここを分けて書くと共有が一気に通ります。
長期目標と短期目標をズラさず作る2ステップ

長期と短期がズレる最大の原因は、長期が抽象的で、短期が測定可能性だけに寄ることです。理由は、同じレール上に積めないと、短期達成が生活の変化に結びつかないからです。ここでは「長期を一文で固定→短期を活動へ分解→条件を添える」の順で整えます。
長期目標は「参加の一文」で固定する(退院支援・訪問もここで整理)
長期目標は「いつまでに/どこで/何の役割を/どの程度」を1文にします。理由は、生活の絵が固定されると、共有しても芯が残るからです。退院支援なら「退院後1か月以内に、自宅で一人暮らしを再開し、買い物と簡単調理を週3回行える」などが形になります。訪問でも「屋内歩行が安定」より「日中のトイレ移動を自立し、夜間は見守りで安全に行える」のように場面を置くほうがブレません。
短期目標は「活動→条件」に分解する(ADL/IADL/QOL・意欲も接続)
短期目標は、長期の参加に必要な活動へ分け、最後に条件を添えます。理由は、活動が明確だと評価が揃い、条件が明確だと介入の優先順位が決まるからです。たとえば長期が「買い物」なら、短期は「店内歩行10分」「会計まで遂行」「疲労時に休憩を申告」などの活動で置き、条件に「補助具」「同行者の役割」「時間帯」などを入れます。整理としては「QOL=長期の意味」「ADL/IADL=短期の活動」と置くと混乱しにくく、意欲は目標そのものではなく条件(成功体験、難易度調整)として扱うと崩れません。
SMARTで通る文章にするためのチェックが5つある(例文つき)

SMARTは“うまく書くため”より、解釈のズレを止めるための道具です。理由は、同じ目標文をチームで共有するとき、曖昧さがあるほど支援が分散しやすいからです。チェックはS・M・A・R・Tの5つを使います。
S/Mでつまずかない書き方(数字が難しい時の代替も)
Sは「場所・状況・手段」を入れて映像化します。理由は、映像が浮かぶとチームの解釈が揃い、評価もしやすくなるからです。例として「更衣ができる」ではなく「自宅寝室で、上衣更衣を座位で、見守りで行う」と書きます。Mは数値が難しければ代替で十分で、次のどれかを入れるだけで判定しやすくなります。
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回数・頻度:週◯回、1日◯回
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時間:◯分継続、◯分以内で完了
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介助量:自立/見守り/一部介助(施設内の基準に合わせる)
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質:声かけ不要、手順が途切れない、ふらつきなし
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条件:手すり・補助具使用、環境設定あり
「安定している」など主観語を避け、達成条件を文章で固定するのがコツです。
A/R/Tを落とさない例文テンプレ(長期・短期)
A(達成可能)とR(関連性)は「現状+支援資源+リスク管理」を一言で支えます。理由は、現実との接点が薄い目標は運用されず、形骸化しやすいからです。T(期限)は日付だけでなく「いつ評価するか」までセットにすると回ります。テンプレは次の形が扱いやすいです。
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長期:◯か月以内に【参加】を【条件つき】で行える(◯週後に評価)
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短期:◯週以内に【活動】を【介助量/環境】で達成(◯回の実施で判定)
例:退院後1か月以内に、週1回の買い物を見守りで実施し、会計まで遂行できる(2週・4週で評価)。短期は2週間以内に、店内歩行10分を四点杖使用で実施し、安全に会計まで行う(3回の実施で判定)などが書きやすいです。
GASで「達成度」を伝えると評価と共有がラクになる3段階

GASは達成の白黒ではなく到達度で語れる点が強みです。理由は、生活場面は揺れやすく、到達度で共有したほうが次の一手が決めやすいからです。ここでは「0を決める→段差を刻む→コメントで次へつなぐ」の順で作ります。
−2〜+2の作り方(失敗しない言葉選び)
0(期待される到達点)は、短期目標(SMART)と一致させます。理由は、0がブレると全段階の意味が崩れるからです。−2は開始時点、−1は途中経過、+1/+2は想定以上を置きます。軸は「介助量・時間・安全・手順の途切れ」など観察しやすいものに統一するとズレません。例としてトイレ移動なら、−2=一部介助、−1=見守り+声かけ、0=見守りのみ、+1=見守りなし、のように段差を小さく刻みます。
カンファで刺さる“達成度コメント”の型
達成度コメントは「到達度+理由+次の一手」の3点セットで十分です。理由は、この3つが揃うと評価が単なる報告で終わらず、チームの行動に直結するからです。たとえば「到達度0。疲労時に注意が逸れやすいので、休憩の自己申告を条件に維持し、買い物場面での実施回数を増やす」のように書くと、次の調整が明確になります。
記録とカンファで一発で伝わるまとめ方が4行ある(計画書にも流用)

「伝わらない」は情報不足より、並べ方の問題で起きます。理由は、読む側が目標の芯を探しにいく文章だと解釈が割れるからです。4行に固定すると、理解が一気に揃いやすくなります。
4行テンプレ(参加→活動→条件→評価)で統一する
4行テンプレは、目標の芯を短くズレなく伝える型です。理由は、「参加→活動→条件→評価」の順にすると、目的と手段と判定が分離されて読みやすくなるからです。テンプレは次の4行で運用します。
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参加:生活で何が戻るか
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活動:短期で積む行為
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条件:用具・環境・介助量・注意点
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評価:いつ、何で判定するか
例:参加=週1回の買い物継続。活動=店内10分歩行+会計を見守りで。条件=四点杖、休憩申告。評価=買い物場面で3回確認。文章で書くなら「参加:〜。活動:〜。条件:〜。評価:〜。」と4文に切るだけで、そのままカンファ資料に転記できます。

計画書(総合実施計画/個別機能訓練)への言い換えポイント
計画書は、同じ内容を“様式に合わせて置き換える”とラクになります。理由は、書類ごとに考え直すと目標が分裂しやすいからです。総合実施計画書は参加(生活像)を前に置くとブレにくく、個別機能訓練計画書は活動と評価を前に出すと読み手が迷いません。対応としては、参加→生活上の目標、活動→訓練内容・到達目標、条件→留意点・環境調整、評価→評価方法・見直し時期、に当てはめるのが最短です。
目標がズレた時に立て直せるルールが2つある

目標がズレるのは失敗ではなく正常です。理由は、生活は体調・環境・介護力などで変動し、目標の前提が変わることが避けられないからです。同じルールで整え直せるようにしておくと、継続的に回ります。
「ズレ」を責めずに“前提”を更新する
ズレたときは目標をいきなり作り直さず、前提条件を更新します。理由は、崩れたのが目標そのものではなく「条件」であることが多いからです。体調、痛み、導線、家族の関わり、不安、役割など、変わった点を短く書き出し、「参加→活動→条件」のどこがズレたかを確認します。条件を書き換えるだけで戻るケースも多く、修正が最小で済みます。
短期を直すか、長期から作り直すかの判断
修正は「参加が同じか」で切ります。理由は、参加(生活の絵)が同じなら短期と条件の調整で十分で、参加が変わったなら短期だけ直しても積み上げが別物になるからです。疲労が増えたなら「10分→5分+休憩」へ短期を下げ、条件に同行者の役割を追加します。役割や価値観が変化した場合は、長期の一文から更新し直すほうが早いです。
迷ったらここ(関連)
判断の根拠づけ:
SOAPに落とす:
ICFで整理する:
「介入しない」を目標化する考え方:
まとめ:目標設定が回り出す5つのポイント

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参加(生活の一文)を先に固定する
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本人希望は“場面・頻度・困りごと”まで具体化する
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ICFは「参加→活動→条件」の順番で整理する
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SMARTはS/Mを先に整え、A/R/Tで筋を通す
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GASと4行テンプレで、評価と共有を同じ言葉にする
まずは、いま書いている目標を1つ選び、4行テンプレに書き直してください。理由は、参加・活動・条件・評価が分離されるだけで、ズレや薄まりが目に見えて減るからです。そこにCOPM/ADOC→ICF→SMART→GASを順に当てはめれば、目標が“現場で回る形”に整っていきます。忙しいときほど型に寄せると、文章も共有もブレません。次のカンファでは、4行テンプレをそのまま読み上げるだけでも効果が出ます。

よくある質問(FAQ)
Q. 目標が「筋力アップ」「歩行安定」みたいに機能寄りになります
A. それでもOKですが、目標文としては「その機能で何が回るようになるか」まで書くと一気に強くなります。例:筋力アップ→“トイレまで自分で行ける”、歩行安定→“買い物で店内を回れる”。機能は“手段”、生活は“目的”にすると作りやすいです。
Q. 短期目標と長期目標の切り分けが苦手です
A. 長期は「最終的にどう暮らしたいか」、短期は「そのために次に超える段差(2〜4週間)」にすると簡単です。短期は“練習メニュー”ではなく、“生活の一部の達成”で書くと現場で使えます。
Q. 本人の希望が出てこない(聞いても分からない)時は?
A. いきなり「やりたいこと」を聞くより、「困ってること」「不便な場面」「1日の流れ」を聞く方が引き出しやすいです。出てきた困りごとを“言い換えて目標化”すればOKです。
Q. GASが難しくて、結局使わなくなります
A. GASは最初から完璧に作らなくて大丈夫です。まずは0(目標達成)だけ具体化して、-1(少し届かない)と+1(少し超える)を足すだけでも十分回ります。慣れてきたら-2/+2を追加でOKです。




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