「辞めたいわけじゃない。でも、このまま続けていいのか分からない」
作業療法士として数年働いていると、そんな気持ちがふと頭をよぎる瞬間があります。
大きな失敗をしたわけでも、明確な不満があるわけでもない。それでも、続ける自信が揺らぐ。
この記事では、作業療法士が「続けるか迷う」ときに、多くの人が無意識に勘違いしているポイントを整理し、判断を楽にする考え方をお伝えします。
作業療法士を「続けるべきか迷う」ときに起きている3つの心の状態

作業療法士として数年働いていると、仕事自体はこなせているのに、なぜか心だけがついてこない感覚に陥ることがあります。続けたい気持ちがゼロになったわけではないのに、前向きに踏み出す自信が持てない。この状態を「甘え」や「逃げ」と捉えてしまう人も少なくありません。しかし実際には、これは能力不足ではなく、経験を積んだ段階だからこそ生じやすい心の揺れです。ここでは、作業療法士が迷いを感じるときに起きている内面の変化を整理し、判断が難しくなる理由を明らかにしていきます。
辞めたいわけではないのに、続ける自信が持てなくなる理由
作業療法士を続けるか迷っている人の多くは、明確に「辞めたい」と思っているわけではありません。むしろ、仕事の意義ややりがいは理解しており、患者さんとの関わりを大切にしたい気持ちも残っています。それでも自信が揺らぐのは、期待される役割が増え、自分の判断や関わり方に責任を感じる場面が増えるからです。新人の頃のように「教わりながらやる」立場から、「自分で考えて決める」立場へ移行する中で、不安が表に出やすくなります。この不安を適性の問題と結びつけてしまうと、必要以上に自分を否定してしまいやすくなります。
「向いていないのかも」と感じ始める思考のクセ
迷いが強くなると、「向いていないのではないか」という考えが頭をよぎりやすくなります。この思考は、うまくいかなかった場面や迷った判断だけを切り取って評価してしまうことから生まれます。実際には、安定してできている関わりや積み重ねてきた経験があっても、それらは当たり前として意識から外れがちです。結果として、できていない点ばかりが目につき、「自分は適性がない」という結論に近づいてしまいます。これは能力の問題というより、視点の偏りによるものです。
迷いが長引くほど判断できなくなる心理的メカニズム
迷いを抱えたまま働き続けると、判断そのものが負担になっていきます。「続ける」「辞める」のどちらを選んでも後悔しそうに感じ、決断を先延ばしにする状態が続きます。その結果、疲労やモチベーション低下が進み、さらに冷静な判断がしづらくなります。この悪循環に入ると、迷っている理由が分からなくなり、「何が正解か分からない」という感覚だけが残ります。まずは、この状態に陥っていること自体を理解することが、判断を取り戻す第一歩になります。
「辞めたい」と思っているのではなく「決められない」状態であるという事実

作業療法士を続けるか迷っていると、「辞めたいと思っている自分」を責めてしまうことがあります。しかし実際には、多くの人が辞めたいわけではなく、どう判断すればいいのか分からなくなっているだけです。ここを取り違えると、必要以上に自分を追い込んでしまいます。この章では、「辞めたい」と「決められない」の違いを整理し、判断が止まってしまう理由を明確にしていきます。
本当に辞めたい人と、迷っている人の決定的な違い
本当に辞めたいと感じている人は、仕事に対する価値や意味を見いだせなくなっています。一方で、迷っている人は「続ける理由」も「離れる不安」も両方抱えています。患者さんとの関わりにやりがいを感じる瞬間があり、仕事そのものを否定しきれていない点が大きな違いです。それにもかかわらず、「迷っている=辞めたい」というラベルを貼ってしまうと、自分の気持ちを正確に捉えられなくなります。まずは、今の状態がどちらに近いのかを冷静に見極めることが大切です。
疲労と適性を混同してしまうと判断を誤る
忙しさや責任の重さが続くと、心身の疲労が判断力に影響を与えます。この状態で「向いていない」と結論づけてしまうと、本来は休息や環境調整で回復できた可能性を見逃してしまいます。適性の問題と一時的な消耗は、見た目がよく似ていますが、本質はまったく異なります。疲れているときほど、自分の能力や価値を低く見積もりがちになるため、結論を急がない姿勢が重要です。
「正解を選ばなければ」という思い込みが生むプレッシャー
作業療法士は、日々の臨床で「正しい判断」を求められる場面が多い職種です。その影響で、キャリアの選択においても「間違ってはいけない」「最適解を選ばなければならない」と考えがちになります。しかし、働き方や進路に絶対的な正解はありません。この思い込みが強いほど、決断へのハードルが上がり、動けなくなります。判断とは一度で完結するものではなく、状況に応じて見直していけるものだと捉えることで、気持ちは少し楽になります。
作業療法士として続けるかどうかを判断するために整理したい3つの軸

作業療法士を続けるか迷っているとき、多くの人は感情の揺れだけを基準に判断しようとします。しかし、それでは結論が出にくくなります。ここで必要なのは、「続ける/辞める」という結論ではなく、判断材料を整理することです。この章では、迷いを分解するための3つの軸を提示し、頭の中を整理する視点をお伝えします。
仕事そのものへの違和感か、環境への違和感か
まず切り分けたいのは、違和感の正体が「作業療法という仕事」なのか、「今の職場環境」なのかという点です。仕事内容自体には納得しているものの、職場の方針や人間関係、評価のされ方に疲れているケースは少なくありません。この場合、仕事への適性ではなく環境要因が迷いを生んでいます。逆に、どの現場に行っても仕事内容そのものに違和感が残る場合は、別の視点で考える必要があります。まずは感情を切り分けることで、必要以上に自分を否定せずに済みます。
今の悩みは一時的な消耗か、構造的な問題か
次に考えたいのは、今のしんどさが一時的なものか、それとも今後も続く可能性が高いものかという点です。忙しい時期や役割の変化による消耗は、時間や調整で回復することがあります。一方で、人手不足や業務設計の問題など、個人の努力では変えにくい構造的な課題も存在します。どちらに近いかを見極めることで、「今すぐ決断すべきか」「様子を見る余地があるか」が見えてきます。
今後も自分が成長できるイメージが持てるか
最後の軸は、これから先の自分を想像できるかどうかです。数年後も同じ環境で働いている自分を想像したとき、成長や学びのイメージがまったく浮かばない場合、迷いは強まりやすくなります。反対に、関わり方や役割が少し変わるだけで前向きなイメージが持てるなら、続ける余地は十分にあります。今感じている迷いを、将来像と結びつけて考えることで、判断の材料が増えていきます。
続ける・辞める以外に考えていい選択肢があると気づく

作業療法士を続けるか迷っていると、「続けるか、辞めるか」という二択で考えてしまいがちです。しかし、この思考が迷いを深くしていることも少なくありません。判断を楽にするためには、選択肢を増やすことが有効です。この章では、二択から一度離れ、現実的に取りうる別の選択肢を整理していきます。
今すぐ答えを出さないという選択
迷いが強いときほど、「早く決めなければ」という焦りが生まれます。しかし、判断の質はスピードと必ずしも比例しません。状態が整っていないまま結論を出すと、後から納得できなくなることもあります。あえて期限を決めず、一定期間「考え続ける」と選択することは、逃げではありません。判断に必要な情報や感覚がそろうまで待つという、立派な選択の一つです。
休む・距離を置くことで見えるもの
心身の疲労が強い状態では、どんな選択肢も暗く見えがちです。短期間の休職や業務量の調整によって、気持ちが落ち着くと、考え方が大きく変わることがあります。距離を置くことで、「本当にしんどかったのは何か」「実は続けたい部分はどこか」が見えてくる場合もあります。これは判断を先延ばしにしているのではなく、判断の精度を上げるための準備期間と考えられます。
働き方を変えるだけで迷いが軽くなるケース
続けるか迷っている理由が、働き方に起因していることもあります。常勤から非常勤への変更、分野の移動、役割の調整など、選択肢は一つではありません。仕事そのものを手放さなくても、関わり方を変えることで負担が減り、迷いが和らぐケースもあります。辞めるかどうかを考える前に、調整できる余地がないかを確認することは、判断を急がないための有効な視点です。
作業療法士を続けるか迷ったときに大切にしてほしいこと

作業療法士を続けるか迷う気持ちは、決して異常でも後ろ向きでもありません。むしろ、仕事に真剣に向き合ってきたからこそ生まれる自然な反応です。迷いがある状態で無理に答えを出そうとすると、自分の感覚を信じられなくなり、判断がさらに難しくなります。
大切なのは、「今は迷っている状態だ」と認めることです。その上で、何に疲れているのか、何が引っかかっているのかを少しずつ言葉にしていくことで、判断は必ず整理されていきます。続けるかどうかは、今すぐ決めなくても構いません。自分の感覚を取り戻すことが、結果的に一番後悔の少ない選択につながります。
まとめ

-
作業療法士が続けるか迷うのは、能力不足ではなく経験を積んだ時期に起こりやすい状態です
-
「辞めたい」と「決められない」は別物であり、混同すると判断を誤りやすくなります
-
迷いを整理するには、仕事・環境・将来像の3つの軸で考えることが有効です
-
続ける・辞める以外にも、休む・距離を置く・働き方を変える選択肢があります
-
判断は一度で終わるものではなく、見直しながら進めて問題ありません
作業療法士としてのキャリアに迷いが出たときは、無理に結論を出そうとせず、まずは自分の状態を整理することから始めてください。判断できる状態を取り戻すことが、次の一歩を納得して踏み出すための土台になります。



コメント