カンファは「評価される場」だと思っていませんか。その思い込みが、発言できなさや緊張を強めている可能性があります。この記事では、作業療法士が無理なく参加できるカンファの考え方と、最低限押さえたい準備の型を紹介します。
作業療法士がカンファを「怖い場」だと感じてしまう3つの理由

カンファに対する苦手意識は、性格や経験年数の問題ではありません。多くの場合、場の捉え方や思考のクセが原因です。この章では、なぜ作業療法士がカンファを「怖い」と感じやすいのかを整理します。理由を言語化できるだけでも、次のカンファに向かう気持ちはかなり軽くなります。
発言=評価だと思い込んでしまう心理
カンファで緊張してしまう大きな理由の一つは、「発言した内容がそのまま自分の評価になる」と感じていることです。医師や看護師、先輩療法士がいる場では、間違ったことを言えば能力不足だと思われるのではないかと不安になります。その結果、頭の中で言葉を何度も確認し、結局発言できなくなる状況が起こります。
しかし本来、カンファは個人を評価する場ではありません。患者さんの状況を多角的に捉え、チームとして次の方針を考えるための共有の場です。それでも評価の視線を強く意識してしまうのは、発言の目的を「正解を出すこと」に置いてしまっているからです。この思い込みが、緊張を必要以上に高めています。
多職種の前で正解を言わなければならないという思考
カンファでは、専門性の異なる多職種がそれぞれの視点から意見を出します。その中で、医学的な用語や経験に基づく発言を聞くと、「自分も同じレベルの正解を言わなければならない」と感じやすくなります。特に新人や若手の作業療法士ほど、この傾向は強くなりがちです。
ただ、カンファにおいて求められているのは、全員が同じ種類の正解を出すことではありません。作業療法士には、生活や活動の視点から気づいたことを共有する役割があります。正解を競う場だと捉えてしまうと、自分の専門性を出す前に思考が止まってしまいます。
OTとしての役割や立場が曖昧なまま参加している状態
もう一つの原因は、「作業療法士として何を伝えるべきか」が自分の中で整理できていないままカンファに参加していることです。評価結果やADL状況、介入内容など情報は頭に入っていても、それをどう切り取って伝えるかが曖昧だと、不安だけが残ります。
役割がはっきりしない状態では、発言の軸も定まりません。その結果、周囲の発言に圧倒され、「今さら何を言えばいいのか分からない」という感覚に陥ります。カンファが怖く感じる背景には、準備不足ではなく、役割の言語化不足が隠れていることが少なくありません。
カンファで何を言えばいいか分からなくなる本当の原因

「何を言えばいいか分からない」という悩みは、準備不足や経験不足だけが原因ではありません。多くの場合、考え方の整理ができていないことで、頭の中が渋滞している状態です。この章では、発言できなくなる背景にある構造的な原因を整理します。
情報を全部伝えようとして思考が止まる
カンファ前に評価結果や経過を一生懸命整理しても、いざ発言しようとすると言葉が出てこないことがあります。その理由の一つが、「分かっていることを全部伝えなければならない」と考えてしまうことです。ADL、機能面、介入内容、反応などを同時に思い浮かべると、どこから話すべきか分からなくなります。
情報量が多いこと自体は悪いことではありません。ただし、すべてを一度に出そうとすると、話の軸が消えてしまいます。カンファでは、詳細な説明よりも「今、何が問題で、次に何を考えているか」が共有できれば十分な場面も多いものです。
臨床推論と報告が頭の中で整理できていない
もう一つの原因は、臨床推論と事実報告が自分の中で分離できていないことです。評価で見えた事実、そこから考えた仮説、今後の見通しが混ざったままだと、発言の形に落とし込みにくくなります。
特に若手の作業療法士ほど、「考えが途中のまま出してはいけない」と感じやすくなります。しかし、カンファは完成した結論を発表する場ではありません。考えの途中経過を共有することで、他職種からの視点が加わり、推論が整理されていく側面もあります。
「考え」を出す場だと理解できていないズレ
カンファを「報告の場」「説明の場」と捉えていると、発言のハードルは一気に上がります。完璧にまとめた説明を求められているように感じ、準備不足だと発言を控えてしまいます。
実際には、カンファは「考えを持ち寄る場」です。分からない点や迷っている点を共有すること自体が、チームにとって有益な情報になります。この認識のズレがあると、「何を言えばいいか分からない」という状態から抜け出しにくくなります。
発言が楽になる作業療法士ならではの3つの視点

カンファでの発言が楽になるかどうかは、話し方のテクニックよりも、どこに視点を置いているかで大きく変わります。この章では、作業療法士だからこそ出せる視点を整理し、発言のハードルを下げる考え方を紹介します。
できる・できないではなく「生活で何が起きているか」
作業療法士は、動作ができるかできないかだけでなく、その人の生活の中で何が起きているかを見ています。例えば、更衣動作が可能かどうかよりも、「朝の準備にどれくらい時間がかかっているか」「途中で疲れて休んでしまうか」といった具体的な様子です。
こうした生活の文脈は、医師や看護師、他のリハ職にとって貴重な情報です。機能評価の数値を完璧に説明しなくても、日常場面での変化や困りごとを伝えるだけで、OTとしての役割を十分に果たせます。
評価結果より「介入で何が変わりそうか」
カンファで評価結果を並べることに必死になると、発言は重くなります。一方で、「この関わりを続けると、ここが変わりそうです」といった見通しを伝えると、話は一気に整理されます。
作業療法士は、評価から介入、そして生活の変化までを一つの流れで捉えています。その視点を共有することが、チーム全体の方向性を考える材料になります。結果がまだ出ていなくても、仮説の段階で構いません。
他職種に伝えるべきOTの本質的な情報
多職種カンファでは、「他の職種が知らない情報」を意識すると発言しやすくなります。例えば、リハビリ中の表情の変化、声かけへの反応、環境を少し変えたときの行動の違いなどです。
これらは作業療法士が日常的に観察しているポイントであり、医学的データとは異なる価値を持ちます。OTの本質的な情報を伝えていると意識できると、正解を言わなければならないというプレッシャーは自然と下がっていきます。
カンファ前にこれだけ押さえれば安心できる準備の型

カンファが近づくと、「もっと準備しなければ」と焦ってしまう人は多いものです。しかし、発言のしやすさは準備量ではなく、準備の方向性で決まります。この章では、作業療法士が安心して臨むための、シンプルで再現しやすい準備の型を紹介します。
事前にメモしておくべき最低限の要点
準備の段階で大切なのは、情報を集めすぎないことです。カンファ前にメモしておく内容は、「今困っていること」「それに対してOTとしてどう見ているか」「次に何を考えているか」の三点で十分です。これだけでも、発言の軸は自然と定まります。
評価項目をすべて書き出す必要はありません。むしろ、要点を絞ることで、話すときに迷いにくくなります。メモは話すための台本ではなく、考えを整理するための道具だと捉えることがポイントです。
評価・所見を1分で説明できる構成の考え方
カンファでは、長い説明よりも分かりやすさが求められます。そのためには、「現状」「見立て」「次の一手」という順番で整理すると伝えやすくなります。最初に現状を簡潔に共有し、次にOTとしての見立て、最後に今後の方向性を添える形です。
この構成を意識すると、話す時間が自然と短くなり、途中で言葉に詰まりにくくなります。1分で説明できる形を想定して準備しておくと、実際のカンファでも余裕が生まれます。
資料やフォーマットに振り回されない整理方法
施設や病院によって、カンファ用の資料やフォーマットは異なります。それらに忠実に書こうとすると、かえって本質が見えなくなることがあります。大切なのは、フォーマットを埋めることではなく、自分の視点を持って参加することです。
公式資料やICFの考え方も、すべてを当てはめる必要はありません。「活動」「参加」「環境」といった枠組みを意識するだけでも、考えは整理されます。型に縛られすぎず、使える部分だけを取り入れる姿勢が、準備の負担を減らします。
カンファ中に発言できなくても信頼を落とさない関わり方

カンファでは「何か言わなければ」と思うほど、緊張が強くなりがちです。しかし、発言できなかったからといって、信頼が一気に下がるわけではありません。この章では、話せない場面でも作業療法士としての立場を保てる関わり方を整理します。
無理に話さなくてもチームに貢献できる姿勢
カンファでの貢献は、発言の量だけで決まるものではありません。相手の話をきちんと聞き、うなずきや視線で反応する姿勢も、チームの一員としての大切な役割です。話を聞く態度は、他職種からの信頼につながります。
また、必要以上に場を埋めようとしないことも重要です。無理に話そうとして内容が曖昧になるより、聞く姿勢を保ち、必要なタイミングで一言添える方が、結果的に評価は安定します。
コメントや一言発言で存在感を出す方法
長い発言が難しいときは、短いコメントを意識するとハードルが下がります。例えば、「その点はOTとしても気になっています」「生活場面では少し反応が違いました」といった一言でも十分です。
こうしたコメントは、議論の流れを止めることなく、自分の視点を示す役割を果たします。事前に準備したメモの中から、使えそうなフレーズを一つだけ選んでおくと、発言のきっかけをつかみやすくなります
沈黙や空気に飲まれたときの立て直し方
カンファ中に沈黙してしまい、「今さら話せない」と感じることもあります。その場合は、無理に割り込もうとせず、話題が一段落したタイミングを待つのが現実的です。
また、「今の話を聞いていて思ったのですが」と前置きすることで、自然に発言につなげられます。沈黙は失敗ではなく、次の発言を準備する時間だと捉えると、気持ちが少し楽になります。
作業療法士としてカンファに参加する意味が変わる考え方

カンファに対する苦手意識は、スキル不足よりも「どういう場だと思っているか」に左右されます。この章では、作業療法士としての立ち位置を整理し、参加する意味そのものを捉え直します。
カンファは評価される場ではなく共有する場
カンファを評価の場だと感じている限り、緊張や怖さはなくなりません。しかし本来の役割は、患者さんについての情報や考えを持ち寄り、チームとして理解を深めることです。誰か一人が正解を出す場ではなく、複数の視点を重ねる場だと捉えることで、発言の重さは大きく下がります。
この認識に切り替わるだけでも、「完璧に話さなければならない」という思い込みから少し距離を置けるようになります。
うまく話すより「視点を出す」ことの価値
カンファで評価されるのは、話し方の上手さではありません。作業療法士としてどんな視点を持って患者さんを見ているかが、チームにとっての価値になります。言葉が拙くても、生活や活動に基づいた視点は、他職種には代えがたい情報です。
うまくまとめることより、「OTとして気づいたことを出す」ことに意識を向けると、発言へのハードルは自然と下がります。
参加し続けることで臨床推論が育つ理由
カンファは一度でうまくなるものではありません。参加を重ねる中で、他職種の考え方や視点に触れ、自分の臨床推論が少しずつ整理されていきます。発言できなかった回があっても、それ自体が無駄になるわけではありません。
考えを共有し、修正され、また考える。この積み重ねが、作業療法士としての判断力や視点を育てていきます。カンファはそのための場でもあります。
まとめ

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カンファが怖く感じるのは、能力不足ではなく「評価される場だ」という思い込みが大きな原因です。
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何を言えばいいか分からなくなる背景には、情報を伝えすぎようとする姿勢や、臨床推論と報告が整理できていない状態があります。
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作業療法士は、機能評価よりも生活や活動の中で起きている変化を伝えることで、十分にチームへ貢献できます。
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準備は量よりも方向性が重要で、「現状・見立て・次の一手」を整理するだけでも発言のハードルは下がります。
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発言できなかった回があっても、参加し続けること自体が臨床推論を育て、作業療法士としての軸を強くします。
総括
カンファは、うまく話す人が評価される場ではなく、視点を持ち寄るための場です。完璧な発言を目指すよりも、OTとして気づいたことを一つ共有する意識で参加してみてください。その積み重ねが、次第にカンファへの苦手意識を軽くしていきます。


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